肩のインナーマッスル:前後運動

肩甲骨の裏側から始まって、肋骨(ろっこつ)の前の方につながっているのが前鋸筋(ぜんきょきん)という名前のインナーマッスルです。

今回ご紹介するトレーニング法「セレタス・アンテリオ」では、この前鋸筋を鍛えることになります。

前鋸筋の構造と働き

まずは左の図を見てください。

前鋸筋は肩甲骨の裏側から、肋骨の脇腹あたりのところに広がっています。
肩甲骨に隠れているのでちょっと分かりにくいですが、「肩甲骨と肋骨をつないでいる筋肉」という感じです。

前鋸筋の構造と働き※機能解剖学ソフトウェア「解体演書」の画像を加工して使用しています。

次に右の図です。オレンジの矢印が筋肉の収縮する方向です。
(肩甲骨がジャマなので、半透明にして表示しています。)

前鋸筋が収縮すると、肩甲骨が肋骨に引っ張られて前の方にスライドして行く力が生まれることが分かるでしょう。

セレタス・アンテリオ

それではトレーニングの方法を説明しましょう。

「セレタス・アンテリオ」というのは、動作を表しているトレーニング種目名ではなく、単に前鋸筋の英語名「serratus anterior」のカタカナ読みです。

STEP1

まず背筋を伸ばし、足を肩幅程度に開いた直立姿勢をとります。
トレーニングチューブのグリップを両腕で握ったら、写真のようにチューブを背中側に回して下さい。

セレタス・アンテリオ ステップ1

ヒジをまっすぐ伸ばして、肩幅よりもやや広めに両腕を広げます。

このとき肩甲骨を背中でギュッと寄せて(肩を後ろに引いて胸を張って)、前鋸筋をストレッチするようにしましょう。

STEP2

準備が出来たら、チューブの弾力に抵抗するように、腕をまっすぐ伸ばしたまま肩から先全体を前にスライドさせていきます。

肩を前に出し切ったときに、写真のように腕をやや閉じるようにすると前鋸筋にしっかりと負荷をかけることができて効果的です。その状態で4~5秒ほど姿勢をキープしたら、ややゆっくりとSTEP1の姿勢に戻ります。

セレタス・アンテリオ ステップ2

なお、STEP1の姿勢に戻ったら、2~3秒ほど休んでから、また肩を前に出す・・・という風にして動作を繰り返して下さい。

この種目を行う上での注意点

セレタス・アンテリオを行うに当っての注意点は以下の通りです。

なお、初めてインナーマッスルのトレーニングを行う方は、「インナーマッスル基礎知識」「トレーニングの前に」のコンテンツを必ずご覧下さい。

動作の速度について

特に前鋸筋に負荷がかかっているのは肩を前に出し切った状態、つまり4~5秒姿勢をキープしている時ですが、前鋸筋の動きを意識するには、肩を前にスライドさせる動作に1秒くらい、後ろに戻す動作に1.5秒くらいかけると良いと思います。

ヒジや手首の角度について

ベンチプレスなどアウターマッスルを鍛えるための筋力トレーニングでは、ヒジを完全に伸ばさないのが常識です。

ヒジは伸ばしきったまま、肩だけを前後に動かす

しかしセレタス・アンテリオの場合、ヒジを完全に伸ばし切った状態(ロックした状態)にしておかないと、負荷が腕の筋肉に分散されてしまうので注意しましょう。

また、手首の筋力を使ってチューブを引っ張らないように気をつけて下さい。

セットの途中で力を抜くこと

普通の筋力トレーニングでは「セットの途中で筋肉を休ませてはいけない」というのが基本です。

しかし、セレタス・アンテリオを行う場合は一回ごとに筋肉を休ませた方が、アウターマッスルが運動に参加しにくくなり、より前鋸筋を効率よく鍛えることができます。

負荷の強さとセット数

20~30回でほどよい疲労を感じるようにチューブの長さ(張り)を調節して下さい。標準的なセット数は2~3セットです。

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